山崎退は不気味だ。土方十四郎は山崎とはじめて会った時からそう思っていた。近藤が山崎を拾ってきた日だ。山崎は、子供のくせに嬉しそうに笑ったりしない。かと言って無愛想なわけでもない。山崎は確かに呼びかけにこたえて笑う。だけれども、その笑い方が土方は嫌いなのだ。にたあ、と口角をあげ、目を少し細める。その笑い方は、まるですべてを超越したような、子供のくせに全てを悟りきっているような、全てと一線置いているようなその目が、土方はとにかく大嫌いだったのだ。いらつく。それでいて、山崎は人と合わせるのだ。決して深入りはしない。けれど、山崎は同化することがとてもうまかった。それが、更に土方には気に入らない要素になった。ガキのくせに。そう思う土方もまだまだ自分がガキと呼ばれる年齢である。山崎はガキではない。幼いのだ。幼いなら幼いなりに総悟くらいのことをやってみろ。何でそんな大人びているのだ。いらいらいらいらいらいらいらいら。あーむかつく。近藤さんはなんでこんなガキ拾ってきたんだ。土方が一度だけ山崎本人の前でそうもらしたことがある。山崎は、すみません、と言って笑った。あの時の笑い方―困ったように、泣きそうな顔で笑う山崎を、土方はよく覚えている。


吐き出したタバコの煙が、曇り空と同化していく。たるい、と目を細める視界の先には、部下とバドミントンに励んでいる山崎が入り込む。あの時気味悪がっていた山崎は、この数年ですっかりどっかに消えてしまった。今では、ただの間抜けな男になりさがっている。山崎は、にたあ、と笑うことはなくなった。それがいつだかはわからないが、いつの間にかへらへらと笑うようになっている。周りと同化するのは前から変っていない。それはそれで、またむかつくので土方は立ち上がり山崎を殴るためにゆっくり歩き出す。あれが恋だったかどうかなんぞ、最早誰にもわからないことだ。今更そんなことに執着するつもりはない。ただ、ひとつだけ。あの時以来、泣きそうな顔で笑う山崎を、土方は一度も目にしていない。




(もうすぐ秋がくる)
土方と山崎(土→山)
2006.9.15
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山崎は土方よりも年上でも年下でも、試験で真選組に入ったにしろ昔からいるにしろ、それが自発的にきたにしろ近藤さんに拾われてきたにしろ、何でも萌えます。
とにかく私は山崎がだいすきです。山崎に執着してるのは土方というよりはむしろ私