「えーと、こういう挨拶はどうも苦手なんでね、教師らしいこと言わないとあとで校長に怒られちまうし、ほんとセンセーは大変なんだよォ。ま、これから言う俺のありがたいお言葉にお前らが感動して泣けば俺の給料もあがるかもしれないから、泣いてくれ。頼む。…とまあ、校長も睨んでいるし、ここからちゃんとはじめようと思う。そういえばこの謝恩会のデザートうまかったな〜確かにカスタードクリームもうまかったけど、やっぱり生クリーム?いやー、本場の生クリームは違うねえ。しかも何がいいかって、カスタード:生クリームを1:1の割合で食うのが最高なんだよ。あー!わかったわかった!はじめるから!マイク持ってくなって!はじめるっつってんだろ!ねえ?冗談がわからない男は嫌ですね〜ご父母の皆さん。あ、忘れてた。卒業おめでとう。これ最初に言えって言われてたんだった。
えー、さて、お前らは今日卒業して、これからはそれぞれの道を進むわけで、さっきの卒業式ではノアの箱舟もびっくりするくらい泣いてたやつもたくさんいて…俺?俺は泣いてねェよ、泣いたフリだ。で、まあお前らが別れたくないって悲しむ気持ちもわかるけどな、甘えーんだよ、甘い。ジョナサンのパフェの生クリームより甘いっつーの。だってよ、お前、死ぬわけじゃねーんだよ。会いたきゃ会えって話だ。一緒に授業できないのがやだっていう奴もいるけどな、大体お前ら授業聞いてなかっただろ。それに、いつまでも同じ箱の中じゃ大きくなれないんだよ。先生みたいなちっちゃい男で終わりたくなかったら他の箱も見てどんどん吸収しねーと。ま、俺みたいなのは俺みたいなので楽しいけどな。
で、あと俺がお前らに言いたいのはな、お前らはよく『せんせー、僕夢がないんです』とか言ってるけど、それは恥ずかしくて言えないだけじゃねーの?ほんとにないやつはこれから探せばいいけど、恥ずかしくていえない奴、お前、それすっげー損してるぞ。歌手になりたいとか小説家になりたいとか、まあ確かに才能がずばぬけて優れてないと難しい夢だ。だけど、努力もしないで『僕はダメだー』とか言ってる奴はもうありえないな。頑張ることかっこ悪いって思ってるやつ以上にかっこ悪いんだよそれ。やらなくて後悔することは世の中たくさんあるけどな、やって後悔することはねーんだよ。両立するのは大変だけど、お前ら何だかんだでそういう忙しいの好きそうだし、いいんじゃねーの?
と、まあ、校長が長すぎて死ねみたいな顔をしてるのでここでやめようと思うけど、学校に遊びにくるときは絶対土産もってこいよ。不二家でいいから。いや、まじで。というわけで、Z組担任の坂田でした。ほらほら、泣いてんじゃねーよ。まじぶっさいくだっつーの」




(最後の晩餐)
銀時
2006.3.23