私たちは、なぜかそのまま黙ったまま、ずっと彼の寝顔をみつめていた。銀ちゃんが起きるのを、頭をあわせてずうっと待っていた。もし彼が永遠に目覚めないというのならば、きっと私たちは永遠に目覚めを待っていただろう。  外からは通りを歩く人たちの声が聞こえていたけれど、ここは極めて静かなのだった。私たちの観察にすっかり退屈してしまった定春は、私の足元でまるくなって眠っている。
「銀ちゃんさみしいのかな」
「…何でそう思うの?」
「なんとなく」
 わたしは何だかかなしくなってしまった。わたしたちがすぐ隣にいるのに、どうして彼は、勝手にひとりで孤独だと思ってしまうのかしら。ひとりきりではないと思うことは、そんなに難しいことではないはずなのに。




   *



「いつまでもこどもじゃないのよね」
「でも、胸もくびれもまだまだ全然ヨ」
「これからどんどんかわっていくのよ。きっとこの一年であなたはすっかり女性らしく成長してしまうんだと思う」
 彼女のいまいち成長していない胸をみると不安になるけれど、でもそのとおりなのかもしれないと私は思った。だって彼女はすっかり大人の身体なのだ。姐御にも私のようなこどもの時代があったと考えるのは、何だか不思議なことのような気がした。
 だけど、なぜだか私は、自分にはそれは訪れないような気がしているのだ。わたしだけは、ずっとこどもでいれるんじゃないかと、そんなことを唐突に思い始めている。そして同時に、そんなはずはないのだとも。