松本が檜佐木と顔をあわせたのは久しぶりだった。藍染達の一件があって以来、お互い仕事で忙しかったのだ。大量の書類を抱えた檜佐木の顔は、心なしか少しやつれたように松本は感じた。徹夜あけなのだろう。髪の毛はへなへなと沈んでいて、口元にはうっすらとヒゲが生えている。この調子では、きっと風呂だってはいっていない。

「乱菊さん」
「お疲れさま。お互い大変ね」
「まあでもこれを出しちゃえばちょっとは休めそうなんで」

そういうとふたりはどちらからともなく隣に腰掛け、自分が呼ばれるのをまった。今日提出締め切りとなっていた書類を出しにきたのだ。どこの隊も今日が締め切りだったこともあり、事務局は大変混み合っていたが、檜佐木にとっても松本にとっても、それは久しぶりにとる休息だ。慌しく動く人たちを見つめ、まるで世界が自分を置いていってしまったようだなとまで感じる。これは早く寝たほうがいいな、と松本は苦笑せざるをえなかった。

「そういえばあんたは現世行くの?」
「え、なんすかそれ」
「あら聞いてない?恋次がうちの隊長のところに来たのよ。で、てっきりあんたとか吉良とかも行くのかと思ってたんけど」
「いや、特にそんな話はきてないっすね。…あ、それってアランカル関係で?」

松本が頷くと、檜佐木はあの気だるそうな表情のまま「じゃあ俺らのとこにはこないっすね」と言った。すぐその後に九番隊の名が呼ばれ、二人は別れてしまったが、松本がその言葉の意味を理解するのには時間を要した。十番隊の名前が呼ばれ、書類を渡し終えた帰り道にそれに気がついた松本は阿散井の痛い心遣いに大きめのため息をついた。きっと自分が呼ばれなかったのも、その理由が含まれているのだろう。阿散井に文句のひとつでも言いに言ってやろうかと思ったが、何より今は風呂に入りたい。そう思い、松本は帰り道を急いだ。




(バスタブ)
松本と檜佐木
2006.2.22
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檜佐木とか吉良とかまともどこが呼ばれなかったのは、相手が東仙とかギンだからだろうな〜という。
(よく考えたら隊長抜けたとこの副隊連れてくのは、忙しいんだし鬼だったという話)
乱菊って、檜佐木とか恋次のことなんて呼んでるんだろう。上の名前でも下の名前でも萌える。