※1〜2期ねつ造(アレルヤが捕まっていないという前提でした)


最近、緩んでるんじゃないか。
ティエリアのことばに、アレルヤは驚き、そして途方にくれてしまった。ティエリアの鋭い視線は、容赦なくアレルヤを刺し続けている。ずるいなあと、彼は思う。
ハレルヤのことはまだ誰にも告げていなかった。彼がいなくなってしまったことを、自分の中で消化しきれていなかったのである。それだけではなく、気を使われたくなかったのかもしれないし、孤独になったということを知られたくなかったのかもしれない。とにかく、アレルヤはひとりぼっちになったのだった。よびかけても、こたえは返ってこない。ハレルヤは、もういないのだ。
それでもアレルヤは、それを誰にも悟られないという、確信のない自信があった。いつも通り振舞えていると思ったし、本心を見せていたのは皮肉にもハレルヤだけだった。何よりまわりに悟られてはいけなかったのだ。彼のプライドのためにも、これからの孤独にたえるためにも、そして、ハレルヤのためにも。
「そう…かな?」
「ああ」
「どうしてだろう」
「原因は俺には関係ないだろう。問題は、君が緩んでいるという、その事実だ」
アレルヤはティエリアから目をそらし、薄く微笑んだ。かわったな、と思う。他人に興味などなかったティエリアが、人の些細な変化に気がつくなんて。それが、成長か退化かはアレルヤには判断がつけられないでいた。嬉しい気もするし、なんだかさみしい気もする。結局、かわっていないのは自分だけなのだ。いつもそうだ。いつだって、アレルヤは、おいていかれてしまう。
口を開こうとしないアレルヤを、ティエリアは責めるわけでもなく、立ち去るわけでもなかった。刺すような視線でみつめながら、アレルヤの答えを待っている。(答えなんてないんだよ、ティエリア)アレルヤは思うが、口には出さない。何と返答しようかと、彼はひたすら考えている。ひとりで、ひとりきりで、考えている。
「もし、この先、僕に何か、緩んでしまうようなことがあったとして」
「…何か、とは」
「何かだよ。でね、その異変にいちばん最初に気がつくのは、きっと君なんだと思う」
アレルヤはにっこりと微笑んでティエリアをみる。彼ののぞむ答えではないかもしれない。それでも、アレルヤは伝えたかったのだ。これでいいのかな、ハレルヤ。彼は胸のなかで己自身に問いかける。その返答すらも、これからは自分で返すのだ。
「そのときはさ、僕のこと、蹴っ飛ばしてでも渇をいれて、目を覚まさせてね」
ティエリアがゆっくりと目を閉じる。何を考えているのか、その瞼の裏には何がうつっているのか、アレルヤには皆目検討もつかないでいた。それでも。彼はおもう。いつかそれを、自分がわかってあげれたらいいと。彼も、かわらなくてはいけないのだ。つよく、なるために。アレルヤはこうして、ハレルヤと決別していく。
「安心しろ。そのときは俺が君を殺してやる」
1を100でかえしたその答えに、アレルヤは驚き、やがて笑いだした。ティエリアが不機嫌そうにアレルヤを見るが、それでも彼は笑いをとめることはできない。涙まで出てきそうだ。だってそれは、いなくなってしまった彼に、そっくりだったから。ぽろり、ぽろり。涙がアレルヤの目からおちていく。



グッバイ・マイヒーロー
(アレルヤとティエリア)
2008.04.14